第27回 史料整理の現場から(7)戦後間もない鎌小・鎌中の 「合同運動会プログラム」
更新日:2023年9月3日
郷土資料館では、調査により新たに発見、あるいは寄贈いただいた歴史資料の整理と並行して、すでに整理をしたものについても現物の所在確認や史料目録(リスト)見直しなどの作業を行っています。この作業の過程で、新たに史料が見つかることがあります。その一つが今回ご紹介する、昭和22年(1947)10月15日に行われた鎌ケ谷小学校・鎌ケ谷中学校の合同運動会のプログラムです(写真)。折りたたまれた状態で刊行物に挟まれていました。
今は鎌ケ谷市内の小学校では5月、また中学校も9月の早い時期に運動会(体育祭)が行われていますが、ひと昔前までは、10月ごろに運動会が行われることが多かったようです。
鎌小・鎌中合同運動会プログラム
昭和22年4月1日から小学校6年、中学校3年の義務教育(六・三制)を柱とする新学校制度が始まり、市域でも4月1日に「鎌ケ谷国民学校」が「鎌ケ谷小学校」(以下鎌小)と改称し、5月10日には「鎌ケ谷中学校」(以下鎌中)が開校しました。しかし、学校の敷地や校舎の確保・建設が未整備であったため、鎌小本校の一部(2階建校舎1棟)を間借りしました。校庭も小学校との共用となり、昭和26年に校庭が出来るまでの4年間は小学校と合同で運動会を開催しました。これまでにも合同運動会のプログラムは別の年のものが確認されていましたが、今回発見された史料は一番古いものになります。
昭和22年4月時点で、鎌小は本校と第一・第二・第三の分校がありました。村内の4年生以上の児童が本校に通い、分校には3年生以下の児童が通っていました。4校合計の児童数は1,205名。鎌中の生徒数は299名でした。約1,500名の児童・生徒が一堂に会して行われた運動会は、本当に多くの子どもたちがひしめき合っていたことでしょう。鎌小の「沿革誌」(注釈1)には当日の様子が「小学校・中学校第一回連合大運動会を催す、三千の観衆盛会なりき」とあります。当時の鎌ケ谷村の人口が約8,200人だったことを考えると、実数はもう少し少なかったかもしれません。とはいうものの、運動会の開催された10月15日は鎌ケ谷・軽井沢の鎮守の祭礼日でもあり、運動会と併せて村中あげての楽しみの行事だったといいますから、相当の村人が集ったことが想像されます。戦後世の中がまだ不安定な時に開かれた大運動会は、日々の暮らしの中で特別な日として、人々の気持ちを高揚させるものだったに違いありません。
プログラムの内容を見てみると、まず演目数が83もあることに驚きます。平成26年(2014)の鎌小の運動会プログラムでは演目数は22となっており、小・中合同であったことを考慮しても現在の約4倍だったことになります。午前9時に始まり昼食を挟み午後4時には終了の予定とされているので、めまぐるしい運動会だったと想像します。
次に演目内容です。「百米」は現在の100m走、徒競走になります。1クラス分の「百米」が1演目になっています。たとえば「No.10 四ノ一 百米」「No.22 五ノ一 百米」といった具合です。1学年ではなく、1クラスごとの演目が記載されているのであれば、演目数が多くなってしまうのもわかります。
では中学校の演目はどうでしょうか。やはり「百米」などはクラス単位で行われていました。「ゆうぎ マヅルカ」や「リレー」などの団体種目はクラス単位ではなく、学年単位・男女別などで構成されていました。
中学3年生の演目には「イモ食競走」がありました。「イモ」はサツマイモとみられます。他年度と比較してみると、同25年には「柿食競走」に変わり、同27年には「パン食い競走」となっていきます。競技で使用する食材も、自給自足物から購入物へと変化していきます。部落(現在の「地区」としての表現)対抗リレーは、午前の部に予選があり、午後の部終盤に決勝が行われました。メンバーは父兄も多く混じっており、一番熱のこもった競技だったといいます。地区ごとのプライドのぶつかり合いだったのかもしれません。
昭和22年のプログラムは演目の多さに目が行きがちですが、学年別・演目内容で分類をしてみると、各分校・学年で細分化されてはいるものの、一例を挙げると個人で競う「百米」、団体で競う「棒倒し」、団体での表現「おゆうぎ(遊戯)」と現在行われている運動会と同じ3要素が適度に配分されていました。昭和から平成、令和と時代は移り、演目内容も「おゆうぎ」から「ヨサコイ節」などに変化しても、運動会に通底する精神は続いているのではないでしょうか。1枚の運動会プログラムからまだまだ多くのことが読み取れると思います。
(注釈1)学校での出来事や変遷を記録したもので、学校で保管されています。
(注釈2)運動会プログラムは当時の様子を知る史料としてそのまま掲載しました。
(注釈3)本記事は、『鎌ケ谷市郷土資料館だより』61号に掲載した「史料整理の現場から」10の内容を再編集したものです。
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